これだけB型が勢ぞろいするにはやっぱりワケがある?
それにしても、羽生結弦選手の再生大復活劇は快挙でした。こんなにも人々を喜ばせて、気持ち良くしてくれるとは…。きっとこういう人をスーパースターと呼ぶのでしょう。
そして並んでその存在感を示してくれたのは、宇野昌磨選手です。
フィギュアで日本人が2人並んで表彰台に立つのは史上初だそうですが、2人並んで血液型がB型だというのも、ちょっと珍しい現象かもしれません。
「フィギュアスケート界はB型が多いの?」
それはここ数年、ずっと私の頭の中をめぐっていた問いでした。
男子だけではありません。その活躍がまだ記憶に新しい浅田真央さんも、そして現在、期待の大きい宮原知子選手もやはりB型なのです。
ここで、過去現在のフィギュアスケート選手の血液型を整理してみます。
以下はこれまでに国際大会においてメダルを受賞した選手の表です。
●40名のうち血液型判明者は30名
O型=9名(30%)
A型=8名(26.7%)
B型=10名(33%)
AB型=3名(10%)
●オリンピック出場者
O型=5名(メダル1名)
A型=5名(メダル1名)
B型=8名(メダル4名)
AB型=2名(メダル0名)
不明者=1名
不明者が10名いますので正確な数値を打ち出すことはできませんが、日本人平均(O≒31%,A≒39%,B≒21%,AB≒9%)と比較すれば、A型が少なく、B型が多いというのは歴然としています。
そしてオリンピック出場者のみで見ると、21名のうち8名(約4割)がB型で、更にはメダル獲得者6名のうち4名がB型なのです。
現在、フィギュアスケーターがどのくらいいるのかは分かりませんが、現状を見る限り、少なくも上位に上がってくる選手たちは、明らかにB型が多いということが言えそうです。
なぜだろう?
まず血液型特性から言えるのは、心身ともにある持ち味の柔軟性があげられます。
体の柔らかさというのは、小さい頃から訓練すれば、ある程度はどの血液型もかなうと思うし、もちろん訓練しなければB型でも硬い人はたくさんいるわけですが、同じ訓練をした場合、B型の体質はだいぶ柔軟性を発揮させることが出来るようなのです。
分かり易く「柔軟性」という表現をしたのですが、もっとピッタリする表現をするなら「しなやかさ」です。
浅田真央さんや羽生選手の動きを観ていると、芯があるのかないのか、時にくねくねし過ぎるようにさえ見えます。実のところ、ダンスとしては”キメ”があった方がカッコ良く見えるので、その点では氷上のダンサーと呼ばれた高橋大輔さんや、女子なら安藤美姫さんなど、ステップやキメが効くA型の方に軍配が上がりそうです。
しかし、それでもこのB型の「しなやかさ」は、ただ者ではないのです。体がしなやかであることが、どれだけ彼らのジャンプや回転を助けていることか知れないからです。
近年のフィギュアスケート競技は、技術力が益々向上していますが、中でも競うのはジャンプの高さや回転数。氷の上で、反動をつけながらジャンプして回転、そして一本のプレートに全体重を乗せて着地するのです。高く飛ぶほど膝や足首に負荷がかかるのですから、B型の鍛えられた”しなやかさ”は、選手にとって強力な味方になっているに違いないのです。
強みは他にもあります。
B型は、難しいことに挑戦するのが好きな人たちです。
「そんな事は絶対無理だろう」と言われると、「ヨシ、ならやってやろうじゃないか」と、ムラムラと燃えてくるという、ある意味…、ここではまったく良い意味での、アマノジャク性を発揮するという性分があるのです。
今回、大怪我をした羽生選手は、図らずも実にB型らしい発言をしてくれました。
「逆境は嫌いじゃない」
そうなんです。彼は、壁が立ちはだかった時、それをどうやって乗り越えるかを工夫したり、挑戦したりするのを、楽しめる人なのです。
羽生選手がフリーを滑り終えた後、右足首をそっと両手で包み込む姿がありました。
「頑張ってくれてありがとう」
自分の足にそういったのだそうです。
今回の出場は不可能と危ぶまれた大怪我からの、奇跡のような復活。こうした怪我の回復の早さもB型体質にはあり得ることで、やはり心身ともに持ち合わせているしなやかさあってのことではないかと思えます。
それにもうひとりのヒーロー宇野選手も、たいへんB型らしい活躍でした。初のオリンピックで、転んでも「笑っちゃって」と、へこたれないあの度胸は見事なものです。その上、ユニークな発言も連発してくれて、周囲を沸かせてくれました。
記者:メダルを誰に見せたいですか?
宇野選手:誰にも見せたくないです。
記者:×△;*×・・?
B型スポーツ選手にはよくあるエピソードです。記者はたいてい、ある答えを期待しながら質問しているわけですが、B型の人は、それをことごとく外してくるのです。他の血液型だと、内心イヤだな、と思っても、記者の聞きたいことに合わせて答えてしまうのですが、そういうことに頓着しない(したくない?)B型は、記者の思い通りにはいきません。
私はB型のそういう正直さを見ると、「もっとやってやれ」と小気味がいいのですが…。そういう噛み合わなさで取材陣に疎まれ、悪く書かれたB型スポーツ選手も過去には結構いるのです。ところが宇野選手の場合は、きっと、彼の人柄でしょう。何だか無邪気な子どもが素直に発言しているかのようで、珍回答もむしろ好評だったようです。
少し、時間を戻してみようと思います。これまでにオリンピックメダルを手にしたB型フィギュアスケーターと言えば、もうひとり、記憶に新しい浅田真央さんがいます。彼女もまた、B型的なしなやかさを存分に発揮したアスリートであり、それだけでなく、日本中から愛された人でもあり、日本のフィギュアスケート界にひとつの時代を作った功労者でした。
それから女子フィギュア界では、忘れてならない重要なB型メダル獲得者がいます。私の世代なら記憶に残っている人も多いかもしれませんが、あの”伝説の人”伊藤みどりさんです。伊藤みどりさんは、女子選手として世界で初めて3回転アクセルを成功させたのです。
世界の”初めて物語”を作るのは、既成概念にとらわれないB型が何といっても得意ですが、彼女は、それまで女子には無理だと思われてきた難しい技をやり遂げただけでなく、回転するときのそのジャンプが、ものすごく高いことでも注目を集めていました。今でもあの高さまで飛ぶ選手はいないかもしれません。
伊藤みどりさんは145㎝という小さな身体で、スケートリンクをピョンピョン跳ね回るものだから、海外の報道陣からは「ウサギちゃんみたいで可愛い」と親しまれていました。
彼女の出現が、世界女子フィギュアの技術レベルを一段押し上げたと言っても、過言ではないのです。
伊藤みどりさんのオリンピックメダル獲得にもドラマがありました。
アルベールヒルオリンピックに出場した伊藤みどりさんは、調子が決して良いとはいえず、シングルでは4位、フリーの演技でも3回転アクセルを一度は失敗して大きく転倒してしまったのです。しかし彼女は諦めませんでした。後半のわずか残り1分で再度挑戦し、誰よりも高く舞い上がり、みごとに成功させました。それが日本女子フィギュア、史上初のメダルした。
転倒してもすぐに立ち直り、果敢に再挑戦する姿は、今大会の宇野選手も見せてくれましたが、B型のこの、失敗を引きずらない立ち直りの早さというのも、スポーツ競技では重要な資質となっています。
4タイプに見る女子フィギアスケート
フィギュアスケート界は、まるでB型の独壇場のようにも思えますが、ここまでフィギュアスケートが盛り上がるには、それなりの軌跡がありました。フィギュア―スケート界で日本選手たちが活躍するようになったのは、いつの頃だったのか…。
記録によれば、最初のスターは戦前まで遡るらしいのですが、私の記憶にあるのは渡部絵美さんという、1970年代にオリンピック出場を果たした選手でした。
フィギュアスケートとは、まさに、氷上のバレリーナ。当然のごとく、それはロシアやヨーロッパ諸国の手中にあり、日本人が世界の舞台に立てるなんて誰も想像していなかったのです。だから彼女の登場が、日本の人々を驚かせたのは言うまでもありません。
彼女の血液型はO型です。O型らしい、周りを明るくするような笑顔でクルクル踊る姿は、日本フィギュア界に、最初の明かりを灯したのでした。
そして渡部絵美さんの引退後を引き継ぐかのように現れたのが伊藤みどりさんでしたが、その後しばらく日本女子フィギュアスケート界は華やぎをなくしたように見えました。しかしそれは必要な潜伏期間。渡部絵美さんや伊藤みどりさんに憧れた少女たちが、徐々に育ち始めていたのです。2000年に入ると、次世代選手たちが次々と頭角を現し始めました。
現在の日本フィギュアスケート界の華やぎの、その口火を切ったのは荒川静香さん、O型でした。彼女は、2006年のトリノオリンピックで金メダルを獲得。オリンピックのフィギア史上においてアジア選手が金メダルを取るのは、彼女が初めてのことでした。
荒川静香さんの活躍した頃は、面白いことに4タイプの血液型選手が揃っていました。
O型の荒川静香さん筆頭に、村主章枝さんがAB型、そして少し後輩にはなりますが、安藤美姫さんA型、浅田真央さんB型です。しかも4人の演技は、血液型の特徴そのものがそれぞれ非常によく表れていたので、私にとっても素晴らしい観察の機会になったのです。
O型、荒川静香さんの演技は、大きくのびやかな演技で迫力がありました。
A型、安藤美姫さんの演技は、形をきめたキレがあり、優雅でもありました。
B型、浅田真央さんは、しなやかで流れるような美しさ、まさに氷の妖精という感じです。
そしてAB型、村主章枝さんの演技は、音楽によく調和した軽やかな滑りで、まるでダンスを楽しんでいるかのようでした。とまあ、こんな具合に…。
振り返れば、日本のフィギュアスケート界を進化させてきたのは、決してB型だけではなかったのでしょう。どの血液型も…、いえ、血液型によらず、多くのユニークな選手たちが、華やかな舞台裏でその身を削りながら、活躍してきたのでした。
しかしそうではあっても、今、B型たちが、自分の(B型的)能力を存分に出し切って、高度な技術にあくなき挑戦をしているのも事実なのです。
それでもB型が活躍する理由
フィギュアスケート界が、B型の活躍を歓迎している理由には、もうひとつプラスαがあるかもしれない、とも思っています。フィギュアスケートは、他のスポーツ競技と異なり、明確に順位を争うものではありません。選手たちは、60m×30mほどのスケートリンクの中で、およそ4~6分の間、滑り、回り、ジャンプし、音楽に乗ってダンスします。そして高い技を競い合うために、自分の最大の技量を出し切ろうとします。転倒するリスク、失敗するリスク、怪我をするリスクと常に隣り合わせにいます。そういうギリギリの、必死の自分になっている時は、選手たちの素の表情、素の姿を垣間見ることになり、その選手の一生懸命さの、生の姿を目のあたりにするのです。
そういう時、B型は、決して自分を着飾ろうとしません。
彼らはどんな場面でも、心を開放しておくことができるのです。
そして転んでもすぐ起き上がり、無心にまた挑戦しようとする。彼らの滑りや表情は、まるで無邪気な子どものようでもあり、観衆は、その姿を見るのがとても楽しくて気持ち良いのです。だから人々は、ワクワクして、彼らを応援したくなる。それはファンだけでなく、審査員だって同じではないかと思うのです。
伊藤みどり、浅田真央、羽生結弦、宇野昌磨…
彼らに共通する一番のことは、その無邪気なまでの取り組み方なのかもしれません。
人々は、彼らの飾らない無邪気さや無心さを愛し、挑戦する勇士に歓喜します。そしてB型は、人々の歓喜に歓喜し、その歓喜に共鳴し、素直に答えることができる人たちなのです。もちろんいろいろな重圧はあるでしょう。それでも、オリンピックという特別な世界舞台は、B型にとって、最高に愉快なショータイムとなり得るのです。
B型の、その才能と、人々の歓喜が共鳴したとき。
それはスーパースターが生まれる所以なり。
羽生選手は、まさにそんな場面を見せてくれたのでした。